バレーボールの競技特性から考えられる怪我とその予防
バレーボールでよくある怪我は何?と聞かれて思い浮かべるものは何でしょうか。
多くの人が「突き指」「捻挫」を想像すると思います。
また、「ACL損傷」「肩の怪我」を思い浮かべる人もいると思います。
この記事では、バレーボールの競技特性を考えることでどんな怪我が起こりやすいのかを科学的知見をもとに考えます。そして、予防するにはそうしたらいいのかを考えていきます。
バレーボールの特徴
バレーボールの最大の特徴は「ボール持ってはいけないし、落としてはいけない」ことです。考えてみるとめちゃくちゃ厳しいことを要求してくるスポーツですね。
そのため、いかにレシーブしやすいところに入れる仕組みを作るかなどの戦術が重要になってきます。
もう一つ姿勢の特徴として、「手を頭上に上げた姿勢が多い」ということです。
ブロックやスパイク、オーバーなどは手を上げた姿勢です。特にセッターは毎回トスを上げるので方への負担がかかりそうです。
バレーボールを構成する動き
バレーボールを構成する動きにはどんなものがあるかというと
・跳ぶ&着地
・走る
・打つ
・ブロック
・方向転換
・滑り込む
・ボールを押す
などがあります。
この中で、「滑り込み」による怪我は“ぶつかる”とか“手をついたときに”などが考えられますが、さらに意外な原因があります。それは体育館の床がはがれてお腹に刺さるという痛ましいものです。なので練習前には床の状態をチェックしておく必要があります。
この時の対処が粘着テープっていうのはどうなの?とは思いましたが仕方ないですかね。
どんな怪我が起こりやすいのか
レビューとしてまとめられている報告がありました。
バレーボールにおける部位別の怪我率¹⁾
上位3つについて少し説明していきます。
まず、圧倒的に足首の怪我が多いです。これはスパイクやブロックで相手の足や仲間の足の上に着地してしまうことが主な原因のようです。足首の捻挫は繰り返しやすいので受傷後やリハビリにおいて適切な対処が必要です。
膝はオーバーユースが原因であることが多いようです。ジャンプと着地の繰り返しが問題となります。バレー部などでは、ジャンプトレーニングなどもすると思いますが硬い地面は避けて、芝生や砂場で行うことがいいかもしれません。実際にそういった場所でのプライオメトリクスはパフォーマンスアップにおいて硬い地面で行ったときと有意差はなく、筋肉痛軽減に効果的との報告もあります。²⁾³⁾
しかし、砂では足が沈むため跳びにくくなり、背筋を過剰に使いやすいので注意が必要です。
指はバレーボールのプレーからも想像できるように、ブロックやレシーブで速いスパイクとの接触により怪我をすることが多いです。初心者では、技術的な問題も考えられると思います。
肩は膝と同じでオーバーユースによるものが多いです。
ポジション別の怪我の発生率⁴⁾
白が怪我の発生率、斜線がタイムロス損傷(スポーツ活動を休止せざるを得ない怪我)の発生率です。
怪我の発生率はセンターが明らかに高く、リベロが一番低いようです。
怪我が発生しやすい部位をポジション別⁴⁾でみると、特徴的なのはリベロで足首の怪我が少なく、指の怪我が多いことです。前にも書いたように足首の怪我はジャンプの着地で多いので、ジャンプをほとんどしないリベロで発生率が小さいのは容易に想像できます。また、レシーブ専門であるため指を怪我しやすいのでしょう。
その他も、ポジションで必要な動きの量や強さで怪我の発生率が変わっている感じがします。
予防するには
ここまで見てきたところ、怪我はオーバーユースによるものや防ぎようがないものがあります。また、ポジション特性によって怪我の発生率は変わってくるとみられ、ポジションによってアプローチを変えていく必要があるかもしれません。
オーバーユースによる怪我は、練習量や負荷量の管理、コンディショニングで怪我のリスクを減らすことは可能だと思います。チームだと個人個人をみることは難しいと思いますが、何か疲労度を測定できるような仕組みがあるといいかもしれません。
ストレングストレーニングにより怪我のリスクが1/3、オーバーユースによる怪我のリスクを1/2に減少した⁵⁾とメタ解析で報告されており、”適切なフォーム”でのトレーニングを取り入れることがいい結果につながるかもしれません。
さらに、筋力トレーニングの量が10%増加すると、怪我のリスクが4%以上減少した⁶⁾というメタ解析の報告もあり、筋トレが怪我予防に効果的であると考えられます。
もちろんやりすぎはよくないですが。
相手が突っ込んできたりする防ぎようがない怪我は、正直どうしようもないです。ただ、もし怪我したときに損傷の程度を抑えるためにトレーニングをしておくことはいいかと思います。また、怪我後の処置が適切であれば復帰までの期間も早くなると思うので適切な応急処置の知識も頭に入れておくといいです。
ポジション別では、センターを例にすれば、適切なブロックのステップと着地技術の習得、ブロックの手の出し方、味方選手との接触を防ぐために合わせる練習をするなどが考えられます。頻繁に方向転換する必要があるセンターは足に急な負荷がかかっていると考えられるので、知らないうちに疲労がたまっているかもしれません。
このようにポジション特異的に披露しやすいとことは違うはずなので、ポジション特性の理解が必要です。
まとめ
ここまでの要点をまとめると
・足首、膝、指の怪我が多く原因はオーバーユースや不可抗力、技術的な問題。
・ポジションによって怪我しやすい部位があり、センターは特に怪我しやすい。
・予防には練習量の調節、適切な技術の習得、適切なトレーニングが必要。
です。
ポジション特性、技術の熟練度、運動量を考えて、できれば個人個人やポジション別に最適な予防方法を考えていきたいですね。
参考文献
1、Reitmayer, Hans Eric. (2017). A review on volleyball injuries. Timisoara Physical Education and Rehabilitation Journal. 10. 183-188. 10.1515/tperj-2017-0040.
2、Singh, Amrinder & Sakshi, Gaur & Singh, Sandhu. (2014). Effect of plyometric training on sand versus grass on muscle soreness and selected sport-specific performance variables in hockey players. Journal of Human Sport and Exercise. 9. 59-67. 10.4100/jhse.2014.91.07.
3、Bere, Tone & Kruczynski, Jacek & Veintimilla, Nadège & Hamu, Yuichiro & Bahr, Roald. (2015). Injury risk is low among world-class volleyball players: 4-year data from the FIVB Injury Surveillance System. British journal of sports medicine. 49. 10.1136/bjsports-2015-094959.
4、Arazi H, Eston R, Asadi A, Roozbeh B, Saati Zarei A. Type of Ground Surface during Plyometric Training Affects the Severity of Exercise-Induced Muscle Damage. Sports (Basel). 2016;4(1):15. Published 2016 Mar 1. doi:10.3390/sports4010015
5、Lauersen JB, Bertelsen DM, Andersen LB. The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2014;48(11):871-877. doi:10.1136/bjsports-2013-092538
6、Lauersen JB, Andersen TE, Andersen LB. Strength training as superior, dose-dependent and safe prevention of acute and overuse sports injuries: a systematic review, qualitative analysis and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018;52(24):1557-1563. doi:10.1136/bjsports-2018-099078